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【薬剤師が解説】プロトピック軟膏の効果と正しい使い方【アトピー塗り薬】

プロトピック軟膏の効果と正しい使い方のアイキャッチ画像

アトピー性皮膚炎の治療では皮膚の炎症やかゆみ症状を抑えるためにステロイドの塗り薬を使用するのが基本です。

しかし、ステロイドの塗り薬を長期にわたって続ける場合、副作用が心配になると思います。

プロトピック軟膏はステロイドとは違うメカニズムで炎症を抑えるため、ステロイド特有の副作用が起こらないメリットがります。

その一方でプロトピック軟膏は皮膚に対する刺激感灼熱感かゆみなどを感じるという特徴(デメリット)があります。

プロトピック軟膏を使いたいけどの刺激感や痛みの副作用せいで使いづらい…

そう思うかもしれません。

しかし、使い方を工夫したり、適切なスキンケアを実践するだけで、副作用は軽減することが可能です。

そこで薬剤師のせいまるが、使い方のコツを解説します!

せいまる

正しい使い方をマスターし、プロトピック軟膏を上手に使いこなしましょう!

この記事では、プロトピック軟膏の効果と正しい使い方塗り方について解説します。

プロトピック軟膏とは

プロトピック軟膏はタクロリムスという有効成分を含む軟膏です。

プロトピック軟膏には成人用と小児用の2種類があり、タクロリムスの濃度の濃い方を成人用、薄いほうを小児用としています。

プロトピック軟膏はタクロリムスを0.1%、小児用はタクロリムスを0.03%含みます。

成人用と小児用の違いはタクロリムスが濃いか薄いかの違いであるため、成人に対して小児用が使用されるケースもあります。

プロトピック軟膏のジェネリック医薬品であるタクロリムス軟膏も発売されています。

ジェネリック医薬品の特徴などについて、こちらの記事で解説しています。合わせてご覧ください。

ジェネリック・後発品でお薬代を賢く節約!お得に! 【薬剤師が解説】ジェネリック医薬品でお薬代を賢く節約!【お得な後発品】

タクロリムスの効果

タクロリムスはマクロライド系の免疫抑制剤というカテゴリーに分類され、ステロイドとは全く異なるメカニズムで炎症やかゆみを抑制します。

皮膚の炎症を止める効果

タクロリムスは作用機序として、免疫に関わるヘルパーT細胞に働きかけ、過剰な免疫を抑えるはたらきを持ちます。

アトピー性皮膚炎では、自身の免疫が皮膚で過剰に反応することで炎症が起きています。

そのため、タクロリムスを塗ることで、炎症を起こしている皮膚の免疫が抑制され、炎症を止める効果を持ちます。

皮膚のかゆみを止める効果

タクロリムスはアレルギーや痒みを引き起こす成分のヒスタミンが分泌されるのを防ぐ作用もあるため、かゆみにも効果があります。

免疫細胞のみにピンポイントで作用するため、ステロイドに特有の副作用が起こらないという特徴があります。

プロトピック軟膏の強さ

ステロイドは炎症を抑える強さを5段階にクラス分けしています。

プロトピック軟膏はステロイドに置き換えた場合の強さのランクではストロング(強い)〜ミディアム(中間)クラスに相当します。

  • Strongest:最強
  • Very Strong:非常に強い
  • Strong:強い←プロトピック
  • Mild:中間←プロトピック
  • Week:弱い

ステロイドの強さのランクをランキング形式で解説しています。合わせてご覧ください。

ステロイドの強さランキング総まとめのアイキャッチ画像 【薬剤師が解説】ステロイドの強さランキング【一覧表・総まとめ】

プロトピック軟膏の使い方

プロトピック軟膏0.1%(16歳以上)

成人には1日1~2回、適量を塗ります

プロトピック軟膏0.03%小児用(2歳以上16歳未満)

小児には1日1~2回、適量を塗ります

成人用も小児用も1回あたりに塗っていい最大の量は5g(チューブ1本)までです。

それよりも少ない量で塗るようにしてください。

また、小児用であっても2歳未満の小児には使用できません。

使えない場合(禁忌)

塗ってはいけない場合
  • 炎症でじゅくじゅくしている部分(潰瘍・びらん)に使用しない
  • 傷口には使用しない
  • 紫外線療法を受けている場合

他にも、腎臓の機能が悪い場合やタクロリムスに対してアレルギーを起こしたことのある方などは使用できません。

塗る量の目安

プロトピック軟膏はチューブの口径が少し小さめです。

そのため、プロトピック軟膏は2FTU(約0.5g)で成人の手の平約2枚分の面積に塗布します。

FTUとは
人差し指の第一関節までチューブから塗り薬を取った量を1FTUといいます。

プロトピック軟膏の副作用

  • 灼熱感(ヒリヒリ熱くなる感じ)
  • 痛み
  • かゆみ
  • その他ニキビなど

主にこれらの症状が現れることが多いです

これらの症状は使い始めによく見られる症状で、皮膚に炎症がある状態で使用した場合、特に高確率で現れます

中には、皮膚が燃えるようにヒリヒリするといった症状が出てしまうこともあります。

副作用が辛いために、「症状がひどくなった」「薬が合わない」と感じてしまい、プロトピック軟膏の使用を断念してしまう例もあります。

これらの副作用を軽減するポイントについて解説します。

副作用を減らすためのポイント

副作用を克服するのに一番重要なのは、灼熱感や痛みが出るメカニズムを理解した上で対策をすることです。

刺激を感じる理由

有効成分のタクロリムスは皮膚の知覚神経(痛みやかゆみを感じる神経)に働きかけ、灼熱感や痛みの元になる物質を大量に放出してしまいます。

この物質の放出が灼熱感、痛み、かゆみなどの原因になります。

しかし、プロトピック軟膏を塗り続けているうちに、肌の知覚神経がタクロリムスに慣れてしまいます。

知覚神経がタクロリムスになれることで、刺激の原因物質が放出されなくなり、灼熱感や痛みを感じなくなります

それと同時にアトピー性皮膚炎のかゆみもおさまってきます

タクロリムスは分子量(物質の大きさ)が約822ダルトンです。

 

この値が500くらいを超えると皮膚の内部にうまく入れないと考えられています。

 

そのため、タクロリムスは正常状態の皮膚からはほとんど吸収されないと考えられています。

①保湿してから塗る

保湿を行うことで皮膚のバリア能が回復します。そのため、皮膚へのタクロリムスの吸収が穏やかになります。

入浴後や洗顔後に保湿をすぐに行い、少し時間を明けてからプロトピック軟膏を塗るのがコツです。

保湿のメリットや上手な保湿の方法について解説しています。合わせてご覧ください。

ヒルドイドの効果と正しい使い方のアイキャッチ画像 【薬剤師が解説】ヒルドイドの効果と正しい使い方【保湿剤】

②炎症の強い時や傷口には塗らない

炎症が強い時はとくに皮膚のバリア能力が低い状態です。

皮膚のバリア能力が低い時は様々な物質が皮膚を突き抜けて中に入ってきます。

タクロリムスが一気に皮膚に浸透し、刺激感を増しやすくなります。

そのため、炎症が強い場合はステロイドの塗り薬である程度炎症を抑えてから、プロトピック軟膏に切り替えることをお勧めします

注意
炎症の強い部分や傷口に塗るとかなりひどい痛みを誘発することがあります。絶対に塗らなないようにしてください。

③少量から少しづつ塗り始める

最初は少しの量を、狭い範囲から塗り始めます。

刺激感の様子を見つつ、塗る範囲を広げていきます。

④入浴直後に塗らない

入浴の直後は皮膚が暖かく、灼熱感などの刺激を感じやすい状態です。

そのため、入浴後は時間を少しおいて熱(ほてり感)が冷めてからプロトピック軟膏を塗るようにします。

入浴後すぐは保湿を行うようにしましょう。

⑤紫外線対策を行う

プロトピック軟膏を塗った皮膚は紫外線による刺激を受けやすくなります。

長時間外出する場合は、日焼け止めクリームや日傘などで紫外線対策をしましょう。

また、海や山でのレジャーなどで1日中外で遊ぶ日の朝はプロトピック軟膏を塗らないようにします。

これらの工夫により、プロトピック軟膏のヒリヒリした灼熱感や刺激をやわらげることができます。

 

これらの対策を行っても最初の数日はどうしても皮膚への刺激が、ほとんどの場合で起こります。

 

刺激感が強すぎて使いにくいと感じたら遠慮なく医師や薬剤師に相談してください。

プロトピック軟膏のメリット

プロトピック軟膏には皮膚の灼熱感などの副作用がありますが、ステロイドの外用薬にはないメリットがあります。

ステロイドの副作用を起こさない

プロトピック軟膏はステロイドとは全く異なるメカニズムで炎症を抑える作用を持ちます。

そのため、ステロイドの外用薬に特有の皮膚の副作用がないというメリットがあります。

そのため、顔の皮膚などにも長期間使用することができます。

正常な状態の皮膚では吸収されない

プロトピック軟膏は炎症を起こした皮膚では吸収されて効果を発揮しますが、正常な皮膚からは吸収されないと考えられています。

つまり、正常な皮膚には影響を与えにくいというメリットがあります。

そのためプロトピック軟膏はプロアクティブ療法との相性がとてもいいお薬であると言えます。

プロアクティブ療法はプロトピック(タクロリムス)やステロイドの使い方を工夫して、皮膚の炎症を未然に防いでいく治療方法です。

プロアクティブ療法のメリットや具体的な方法について解説しています。とても有効的な治療方法です。ぜひご覧ください。

炎症を未然に予防!プロアクティブ療法の方法を解説のアイキャッチ画像 【薬剤師が解説】炎症を未然に予防!プロアクティブ療法の方法を解説【アトピー新治療】

よくある質問

よくある質問にQ&A形式で解説します。

どれくらいの人に皮膚の刺激感の副作用が出ますか?

ほとんどの方(約8割)の方に皮膚の刺激感が現れます。

プロトピック軟膏の臨床試験では約8割の方に灼熱感、ほてり感、ヒリヒリ感、かゆみなどの症状が起こりました。

しかし、その症状多くは一過性のものであり、皮疹の改善とともに刺激感は改善されました。


刺激感の症状はどれくらいの期間続きますか?

ほとんどの場合で1週間程度で症状は改善されます。

皮疹の改善とともにタクロリムスの吸収も減少するため、ほとんどの場合で1週間程度で落ち着きます。

また、一旦プロトピック軟膏の使用をやめていて、久しぶりに再開するときは再び刺激感が現れることがあります。


紫外線対策はどれくらい行えばいいですか?

紫外線を長く浴び続ける場合(海水浴、雪山、日焼けサロン)は注意が必要で、その日はプロトピック軟膏の使用を控えてください。

基本的に日常生活では問題になりません。

長時間外出する場合は、日傘や帽子をかぶったり、日焼け止めクリームで対策しましょう。


プロトピック軟膏と保湿剤や日焼け止めクリームはどういった順番で塗ればいいですか?

特に順番に決まりはありませんが、保湿剤は最初に塗ることをお勧めします。

日焼け止めクリームとプロトピック軟膏はどちらが先でも大丈夫です。

まとめ

プロトピック軟膏は以下のような特徴を持ちます。

  • ステロイド外用薬とは異なるメカニズムで皮膚の炎症やかゆみを抑制します
  • ステロイドに特徴的な副作用を起こしません
  • ステロイドが使いにくい顔などにも長期間使用することができます
  • 副作用としてヒリヒリとした灼熱感やかゆみなどがあります。
  • 灼熱感などの副作用は最初の数日間に現れやすく1週間程度で落ち着くことがほとんどです。
  • 皮膚刺激の副作用は工夫により、ある程度軽減することが可能です

プロトピック軟膏はステロイド特有の副作用がなく、などの皮膚が薄い部位にも使いやすいお薬です。

 

一方で、最初の数日間に現れる灼熱感などの副作用がほどんどの場合で見られます。

そのため、使いにくく感じてしまい、お薬が続けられないといったデメリットがあります。

 

しかし、使い方を工夫することでプロトピック軟膏の副作用はかなり軽減することが可能です。

 

プロトピック軟膏を上手に使うことがアトピー性皮膚炎の薬物治療で重要となります。

プロトピック軟膏は正常な皮膚から吸収されず、影響を及ぼさないと考えられており、プロアクティブ療法との相性がとてもいいお薬です。

プロアクティブ療法とは、プロトピック(タクロリムス)軟膏やステロイドの使い方を工夫することにより、皮膚の炎症を未然に防いでいく治療方法です。

プロアクティブ療法のメリットや具体的な方法について解説しています。合わせてご覧ください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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