生まれてから一度もインフルエンザにかかったことがないという方、滅多といないではないでしょうか。
インフルエンザは世間的にも話題になる身近な病気です。
毎年、冬のシーズンではインフルエンザが大流行します。
せいまる
そこで、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用を持つ新薬のゾフルーザが発売されました。
この記事では薬剤師のせいまるが、インフルエンザ新薬のゾフルーザについてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
ゾフルーザとは
ゾフルーザは錠剤タイプの飲み薬です。
果粒タイプも発売される予定です。
有効成分は「バロキサビルマルボキシル」という抗インフルエンザウイルス作用を持ちます。
インフルエンザ感染症の原因である「インフルエンザウイルス」(A型とB型)をターゲットにした抗ウイルス薬であり、インフルエンザ感染症に使用されます。
ゾフルーザの効果
バロキサビル マルボキシルの作用機序のメカニズムは従来の抗インフルエンザ薬と異なるメカニズムです。
作用メカニズムは難しいので読み飛ばして大丈夫です。
インフルエンザウイルスは自分自身では増殖することができません。
よって、細胞のなかでヒトのmRNAのキャップとういう部分を借りてウイルスのRNAを増やす必要があります。
その過程でヒトのmRNAを切断する必要があり、その際にキャップ依存性エンドヌクレアーゼという酵素が必要です。
バロキサビル マルボキシルはキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害し、ウイルスのRNAを増やせないようにします。
よってインフルエンザウイルスが細胞内で増えることができなくなります。
従来の抗インフルエンザウイルス薬よりも、より上流の増殖過程を阻害するため、今までにない新たな作用メカニズムを持つといえます。
ゾフルーザのメリット
ゾフルーザには今までの抗インフルエンザ薬にはないメリットがあります。
ゾフルーザは1回飲むだけで治療が完了
従来のタミフル(オセルタミビル)では、インフルエンザ治療に1日2回5日間服用する必要があり、服用回数が多く負担となっていました。
吸入タイプのイナビル(ラニナミビル)などのお薬では吸入の回数が多く、小児などの場合で特に吸入がうまくできないなどの問題がありました。
ゾフルーザは1回の服用で十分に効果が発揮されますので、患者さんの負担が少ないのが特徴です。
ウイルス量の低下が早い
ゾフルーザは、従来のインフルエンザ飲み薬のタミフルと比較してウイルス排出停止までの時間が早いことがわかっています。
ゾフルーザの投与翌日には多くの場合でインフルエンザの迅速診断でインフルエンザウイルス陰性になると考えられています。
そのため、インフルエンザの家庭内感染や院内感染をより減らすことができる可能性があります。
せいまる
感染拡大を抑えられるかどうかについては今後明らかになっていくと考えられます。
また、腎機能の影響を考えなくて良いので、腎機能が低下している場合でも投与量の調節が必要ありません。
ゾフルーザの飲み方
用法用量
成人と12歳以上の小児には20mg錠を2錠(または果粒4包)を1回の服用で治療が完了します。
12歳未満の小児の場合は体重によって服用量が変わります
- 体重40kg以上で 20mg錠2錠または果粒4包
- 20kg以上40kg未満で 20mg錠1錠または果粒2包
- 10kg以上20kg未満で 10mg錠1錠
- 10kg以下の小児については服用できません。
これらの容量を1回の服用で治療が完了します。
服用のタイミングは症状発症後になるべく早くですので、食後でも食前でもどちらでも大丈夫です。
※食後の方がお薬の血中濃度が低くなりますが効果に差はないと考えられるとのことです。(MR様情報)
10mg錠剤はコーテイングされていない素錠であり、苦味があるとのことです。
粉砕することも可能ですが、24時間以上の安定性の検討はできていないため、粉砕したらすぐに服用とのことです。(MR様情報)
そこで、シオノギ製薬はゾフルーザ錠と一緒に混ぜて飲んでも良い食品を以下のように案内しています。
- オレンジジュース
- りんごジュース
- ぶどうジュース
- 服薬補助ゼリー
- アイスクリーム
- ヨーグルト
- プリン
これらの食品と混ぜて飲んでも良いとのことです。
せいまる
飲み合わせ
ゾフルーザには飲み合わせの悪いお薬は添付文書に記載されていません。
ゾフルーザの注意点
一見すると弱点がなさそうなゾフルーザですが、いくつかの注意点があります。
予防には使えない
ゾフルーザはインフルエンザの予防に使用することは認められていません。
そのため、予防として使用したい場合はたの薬剤を使用する必要があります。
従来のタミフルではインフルエンザ感染の予防として使用することができます。
未知の副作用がある可能性
ゾフルーザは全く新しいメカニズムで作用するお薬です。
また、新薬であるために使用の経験が少なく、まだ発見されていない未知の副作用がある可能性があります。
早めに服用しないと効果が期待できない可能性
ゾフルーザはインフルエンザの症状が発現してからできるだけ早い段階で服用します。
症状発現から48時間以上経過した後に投与した場合の効果を裏付けるデータがないためです。
肝機能に注意
ゾフルーザは肝臓で代謝されるため、肝機能に障害がある場合は慎重投与とされています。
肝機能に異常がある場合や、心配がある場合は医師に相談するようにしてください。
耐性ウイルスの可能性
臨床試験では、ゾフルーザを服用した一部の成人から、変異したウイルスが発見され、ゾフルーザに対する感受性が低下していたとのことです。
この感受性の低下が治療どれほどの影響がを与えるのかがはっきりとわかっていません。
耐性については未知の部分が多く、今後の研究課題と言えます。
服用後の異常行動等に注意
ゾフルーザの臨床試験中に異常行動は見られてはいませんが、過去に他の抗インフルエンザウイルス薬を服用した未成年者が異常行動を起こし、重大な事故に至ったケースがあります。
そのため、抗インフルエンザウイルス薬の全般に対して注意喚起がなされています。
薬剤との因果関係は不明ではあるものの、インフルエンザ感染症を発症した際の異常行動が報告されています。
実際のところ、お薬の服用に関係なく異常行動を起こすと考えられています。
そのため、小児・未成年者では万が一の異常行動による転落事故などを防止すため、保護者等は少なくとも2日間は小児・未成年者が1人にならないことを考慮することとなっています。
まとめ
ゾフルーザの特徴についてまとめます。
- ゾフルーザは1回のみの服用で治療が完了します
- できるだけ早く服用することが大切です
- 年齢や体重によって服用量が変わります
- 全く新しい作用メカニズムを持つインフルエンザ薬です
- ウイルスの減少が既存のタミフル等と比較して早くなっています
- 予防に使用することはできません
- 薬剤耐性のウイルスが増える可能性があります
- インフルエンザ発症時の異常行動に注意します
インフルエンザの治療薬あると言っても、インフルエンザはまずかからないことが一番大切です。
疲れやストレスは免疫力を低下させ、インフルエンザなどのウイルスに感染しやすくなってしまいます。
そのため、疲れやストレスを溜め込まず、栄養をしっかり摂取し、規則正しい生活を心がけましょう。
また、インフルエンザの予防接種も忘れずに受けておきましょう。
インフルエンザウイルス感染症全般についてこちらの記事でまとめています。併せてご覧ください。
【薬剤師が解説】インフルエンザにかかったら【出席停止期間は?欠席になる?】 【薬剤師が解説】インフルエンザ感染症について【型や症状・予防方法】最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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せいまる
参考文献
- ゾフルーザ錠10mg・20mg添付文書:https://www.shionogi.co.jp/med/download.php?h=f4785e158ad77b62185a53f57814fec6
- 抗インフルエンザウイルス剤ゾフルーザ製品情報(シオノギ製薬):https://www.shionogi.co.jp/med/p_xofluza/